君の一縷 

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「…………ぷっ! …アハハハハっ!」   「な、何なんですか!?」   予想に反する大爆笑に、戸惑っている私のことなんてそっちのけ。 それどころか、「今めっちゃ焦ったやろ? すぐ顔に出るんやなぁ。あ~おもろ! アハハ!」……なんて、完全に私で遊んでいる様子。   もう頭にきて、今度こそビシっと言わないと、と私は彼を睨みつけた。   信号が変わった瞬間、彼はチラッと私を見てからゆっくりアクセルを踏んだ。   「ごめんごめん。そんな怖い顔せんとってや。……覚えてなくてもしゃあないし、覚えとっても分からんやろうし。オレも随分変わったからなぁ。」   なんだか語気に勢いがなくて、少しだけセンチメンタルだった。それから彼は意味不明なため息をついて、あとはまたさっきの調子で、あれこれ話を盛り上げてはケラケラ笑った。   私は当たり障りなく返事や相づちをうったけれど、ため息の前の最後の一言が、妙に気になっていた。
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