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「ごめんなさい。しばらくそういうのは遠慮しとく。ちょっと、今気乗りしないから……。」
私の気持ちを察したのか、母はもうこれ以上は何も言うまいという風に、頷きながらまた微笑んだ。
それから久しぶりの母子の夜は、楽しくふけていったけれど、母が主寝室に戻って一人になってしまうと、途端に気持ちはまた中辻君とのことを思いだしてしくしく痛む。
とにかく休もう。横になろうと照明を消してしばらくした頃、携帯電話が鳴った。
「……メール?」
それは中辻君からのもので、背中に緊張を走らせながら開くと、明日会いたいという旨の内容だった。
今さらなんなの?
反射的にはそう思ったけれど、「見せたいものがある」という一文に、私は見事に引っかかってしまった。
……違う。
本当は、まだ諦めきれなかった。こんなに切ない目にあっているのに、彼に未練がましくすがりたいだけ。
あなたが今まで繰り返した“遊び”じゃなくて、どうか、私を本気で愛して……
本能までもが、そう叫んでやまなかった。
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