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「……まぁええわ。あぐり、菊川さんのことなんやけど。あの人あぐりに、ガラスケースに入った手品見せたやろ?」
「……え?」
ドキッとした。
もやもやも、イライラも、一瞬でとんでしまうほど。
「ピンク色の液体の入ったケースのこと?……どうして」
「違う。あれは液体に色が着いてたんやなくて、ガラス容器の方に着色がしてあってん。」
彼はさらりとそう口にした。私はしばらく頭の中が真っ白になってしまった。
「……どうしてあなたが知ってるの!? あれは、亡くなった菊川さんが二人だけの秘密だって! 私にも素材も何も教えないんだって…」
「教えんかったんやなくて、教えられへんかったんやろ。知らんのやから。」
「知らないって……」
彼はうつむいて言った。
「……あれ、オレが作ったんやもん。」
―――― それは
、心臓を鷲掴みにされたようなショックだった。
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