君の一縷 

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「そう言われると思って、今日はそれを再現することにしたんや。」 渡されたビーカーの中には、見覚えのある輝く玉が入っていた。   「これ……」   「昨日の晩から作った。あの時ロッカーから盗られた0番は、試行錯誤してやっと出来たものやったから、今でも工程はちゃんと覚えてるわ。作り方、知りたい?」   「……えぇ。」 半信半疑ながらも、私は再現を見せてもらうことにした。   「これ真珠で作ってんねん。真珠を粉砕してできた粉を、薬剤と混ぜて型に入れて成形する、この線分かる?半円ずつ」   「チョコレートみたい」   「それで、固まったら肝心のメッセージ書いたプレートを中に入れて接着。次はコーティング、そしたらほら、こうやってツヤツヤなる」   「きれい……」   彼は作業台に置いてあった食用酢の瓶を手にとると、試験管に少し注いだ。   「ほら」   「何?これ」   「酢や」   「本物のお酢なの?……菊川さんは、危険な薬品だって…」   「アハハ。危険な薬品なんか持ち出されへんし。割れたりしたら大変やろ。薄い真珠の粉溶かすには、酢で十分や。」
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