君の一縷 

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注いでみると、真珠は小さな気泡に包まれて溶けていく。 「……あぁ、間違いない。あの日と同じように…」 「今回は時間がなさ過ぎてガラスまで手まわらんかった。ごめんな。……それから、あの頃、勇気がなくて、ごめん……。」 中辻君はそう囁いて、私の手に手を重ねた。 同時に間違いなく確定したのは、中辻君が7年前、本当に私に恋していたということだった。 そして7年前夕焼けの下で見たのと同じように、メッセージプレートは浮き上がった。 「あなたが好きです」 なんだか涙がこぼれて仕方なかった。 悲しいのか、嬉しいのか、自分にも分からないまま顔を覆った。 「……わからない。……私を混乱させないでよ。7年も経って、どうして私なの……? どうして……? わからない…わからない…」 中辻君は黙って手をひいて、優しく抱きしめてくれた。 そっと髪を撫でられて、頬擦りされて、少しだけ落ちついた私に、中辻君は言った。
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