9人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんなさい。随分遅くなっちゃって」
「ああ、大丈夫だよ」
初めてだもんね、と康司さんは優しい口調のまま続けた。
部屋の中央の照明は消されていて、あの枕元のランプだけが淡い光で室内を照らしていた。深い眠りに誘うような、ゆったりとしたクラシックも聞こえてくる。
ロマンチック。そう表現するのが最適だと思う。その優しい優しい光の中で。康司さんが、おいで、と囁いた。
「想像以上、かな。……可愛い、いや綺麗だよすごく」
甘さを増した康司さんのその言葉に、演技じゃなく、本当に照れてしまった。
ベッドの端に腰かける康司さんの1メートル手前まで近付く。見えないけれど(私はあんまり視力が良くない)、康司さんの視線が私の身体に注がれていることはわかった。
バスタオルは巻いてるけれど、まるで裸体を見られているかのように恥ずかしい。
――さっきまであんなに私の心を支配していた不安の塊は、跡形もなく消え去っていた。今はもう好奇心が頭をもたげている。
早く早く扉を開けて、とせがむ声が聞こえた。
「優しく、するからね」
そうして私の身体は、柔らかいシーツの中に、ゆっくりと沈み込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!