プロローグ

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 ――11月21日。  午後10時を過ぎた駅前の人ごみは想像以上の規模で、声をかけられるまで、その人が『お相手』だとは全然気付かなかった。 「もしかして、君、ユカちゃん? さっきメールした康司(やすし)です」 「ああはい、私です。ユカです。えっと……よろしくお願いします」  初めての援交、相手は自己申告35歳の営業マン。一見すれば、『中肉中背』の言葉が似合う、普通のオジサマだ。  良かった。ネットの掲示板なんか利用してるんだから、直視したくないような顔してる変態オヤジかと思ってたんだよね。  ちょっとラッキー。 「君、本当に20? すごく若く見えるよ」  じぃっと見られてちょっと焦った。でもそこまで疑っているわけではないみたい。  それに今日は、化粧も格好もバッチリのはずだ。暗いし……バレるわけがない。 「ありがとうございます。嬉しいです」  えへ。ホントは16です、ごめんなさい。  歳なんて、化粧とか服装でいくらでも誤魔化せるんだよね。  もしバレても、この人のよさそうなオジサマは「高校生? やった、ラッキー」って笑いそうだけど。
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