プロローグ

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 うわ、すごい、何これ。テレビなんてあるんだ。お風呂、意外と綺麗。うわ……枕元にアレがある。生々しいなあ。  唇から歓喜(といったら変だけど)の声が溢れそうになる度に、何度も何度もそれを堪えた。  16歳ならともかく、20歳の女の子がラブホに行ったことないなんてありえないと思ったから。実際のところはわからないけれど。  タッチパネルで適当に選んだその部屋は、想像で描いたものより、うんと狭かった。でも悪くはない。  壁の色は白。ケバケバなピンクとかじゃなくて本当に良かった。  明かりを消し、枕元のランプの電源を入れるとベッドの周辺だけが淡い橙色(だいだいいろ)に染め上げられて、ちょっとオシャレな感じ。  ほとんどガラスしかないお風呂場を見て、少し恥ずかしくなった。噂には聞いていたけれど、半信半疑だったし。  やっぱり、写真と実物は全然違う。 「先にお風呂入る?」  それまでずっと黙っていた康司さんに突然話しかけられて、口から心臓が出そうになった。  ああはいじゃあ行ってきます、と機械のような返事をして、そそくさとお風呂場に駆け込む。跳ね上がった呼吸を落ち着かせて、準備開始だ。
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