プロローグ

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 他の人はどうか知らないけど、初めてのことってなんだか無性に楽しくなる。幼稚な言葉を使えば、まさに『ワクワクドキドキ』な感じ。  昔から私は好奇心が人一倍強くて、普通の子なら後込(しりご)みしそうな場所にも迷わず入ってしまうような子供だった。  未知に対する興味が異常なほど多く、自分で確かめないと気が済まない。今でもそれは変わらない。  自分が知らない世界に、どうしようもなく憧れてしまう。  ――今ホテルに入ったよ。全部終わったら電話するから待ってて。  こっそり忍ばせてきた携帯にそう打って、急いで送信。送り主はもちろん美穂。心配だから隙が出来たら状況報告、と2時間前に釘を刺されたのだ。  さて、と。シャワーだけ軽く浴びればいいのかな? 一応、家を出る前にも入ってきたけど。  携帯を大事にしまって(美穂からの返信はいつも遅い)ゆっくりと服を脱ぐ。  薄く、白い汚れのこびりついた鏡に、背伸びして買った赤い下着を身にまとう自分の姿が鮮明に映る。  ……これから私は、あの優しそうなオジサマに抱かれるんだ。  一際白い喉仏(のどぼとけ)が、ためらいがちに動いた。
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