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連絡をした友人は、すぐ家にやって来た。
暫くお互い無言で、部屋の中にはテレビからもれる音だけが響いていた。
何年も前の事なのに、ありきたりの表現で言うと、本当に昨日の事みたいに鮮明にあの日の情景だったり、やり場のない想いだったりが今も心を少しだけ締めつける。
「見せて。」
沈黙を遮ったのは友人だった。
テストスティックを見せてと言われて、持って帰ったスティックを友人に見せた。
「あんた、どうすんの?相手にも言った?」
言ってもいいのかな?それが解らなくて…と、友人に言ったらバカじゃないのって、私は怒られた。
何を気にしてれば言うか言わないかを悩んでるの?
そう聞かれて、妊娠した事がなぜか彼にたいして、凄く申し訳なく感じてるんだなって思った。
「ごめん。」
前に言われたその言葉が、私にそう思わせていた。
言って急に連絡取れなくなったらどうしよう…。
嫌われたらどうしよう。
色んな気持ちが、ぐるぐると頭の中心の中を埋め尽くしている一方で、彼の赤ちゃんがこのお腹の中にいるんだって、とてつもない嬉しさもあった。
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