忘れられない恋。

8/22

703人が本棚に入れています
本棚に追加
/679ページ
連絡をした友人は、すぐ家にやって来た。 暫くお互い無言で、部屋の中にはテレビからもれる音だけが響いていた。 何年も前の事なのに、ありきたりの表現で言うと、本当に昨日の事みたいに鮮明にあの日の情景だったり、やり場のない想いだったりが今も心を少しだけ締めつける。 「見せて。」 沈黙を遮ったのは友人だった。 テストスティックを見せてと言われて、持って帰ったスティックを友人に見せた。 「あんた、どうすんの?相手にも言った?」 言ってもいいのかな?それが解らなくて…と、友人に言ったらバカじゃないのって、私は怒られた。 何を気にしてれば言うか言わないかを悩んでるの? そう聞かれて、妊娠した事がなぜか彼にたいして、凄く申し訳なく感じてるんだなって思った。 「ごめん。」 前に言われたその言葉が、私にそう思わせていた。 言って急に連絡取れなくなったらどうしよう…。 嫌われたらどうしよう。 色んな気持ちが、ぐるぐると頭の中心の中を埋め尽くしている一方で、彼の赤ちゃんがこのお腹の中にいるんだって、とてつもない嬉しさもあった。
/679ページ

最初のコメントを投稿しよう!

703人が本棚に入れています
本棚に追加