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「全然ダメ。声が伸びてない。」
「折角外に出てきたんだからもっとのびのび歌いなよ?」
「・・・わかってる。」
私は進藤京香(しんどうきょうか)。
大学に入学して私はバンドサークルに所属していた。
私のパートはボーカル。
歌うジャンルは様々。洋楽もJpopも。
でも最近思うように声が出ない。
俗に言う、スランプだ。
そういう時は決まって音楽室を出て、大学のすぐ隣に在る駐車場で発声の練習をする。
そこの駐車場は道路に面しているが車も人もあまり通らない。
大学の壁に声が反響して、練習には最適だ。
「京ちゃん、焦らんでもいいよ?ゆっくりがんばろう。」
彼女は水藤エリカ(すいとうえりか)。
京香とは高校からの同級生でサークルも私が誘い、一緒に入った。
京香の良き理解者であり、親友である。
ちなみに彼女のパートはキーボード。
「でもよぉ、本番は明後日だぜ?」
ハァとため息をついたのは本田岳(ほんだがく)。
パートはリードギターでバンドのリーダーを務めている。
「でもさぁ、急にどうしちゃったわけ?もしかして風邪でも引いたの?」
そう言って京香のおでこに手を当てて、う~んと唸っている。
彼は佐伯一輝(さえきかずき)。
パートはドラム。
「おいおいカズ!!そんなんシャレになんねぇって!」
アハハ、と笑いながら一輝の肩を叩く彼は
大久保淳(おおくぼあつし)。
たまに空気が読めない、でも憎めないヤツ。
「あっくんもかずくんも岳も、言いすぎ!!京ちゃんだってがんばってるんだし。」
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