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「京ちゃん・・・大丈夫かな。」
1人部室を後にしたエリカはふと呟き、空を見上げる。
エリカは京香との付き合いも長いため、少しだが彼女の家の『事情』を知っていた。
彼女がスランプな理由。
それは間違いなくその『事情』に関係するものだった。
京香は1人で溜め込む癖がある。決して人を頼りにしていないわけではないが、
ただ心配をかけたくないだけだった。
それが逆にエリカの心配の種になっているのだが。
その『事情』とは。
京香の両親である。
京香には昔、2つ年の離れた兄がいた。
その兄は京香が幼稚園に入園する少し前に亡くなった。
原因は交通事故。
買い物中の母親から少し離れた隙に道路に飛び出し帰らぬ人になってしまった。
京香はまだ小さかったが母親の酷い衰弱振りは今でもよく覚えているという。
その時から、母親と父親との折り合いが悪くなった。
些細なことですぐに言い争い、喧嘩が絶えない。
京香が中学生になった頃からろくに食事も一緒にとっていないという。
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