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「差し詰め、ようやく離婚・・・というとこかな。」
エリカがふと呟く。
――――京ちゃん・・・つらいだろうな。
「おまたへ~。」
「なんだよ、おまたへって。」
そう言いつつも笑顔で京香を迎えた彼は沢木健太(さわきけんた)。
京香とは高校からの同級生であり、彼氏でもある。
付き合って早3年になる。
「お店、行こっか。」
そう言って向かった先は2人行きつけのカフェだった。
行きつけの店でいつものようにコーヒーを注文し他愛もない話で盛り上がる。
「で、どうしたの?話って。」
コーヒーを飲む手を止め、京香を見つめて健太は言った。
「うん・・・あの、親のことなんだけど・・・。」
京香はふと俯く。涙を堪えているかのごとく。
だがすぐ、意を決して健太を見つめる。
「とうとう、離婚するって。」
そう言うとははっと笑いながらコーヒーカップを持つ。
「あたしももう大学生だし、そろそろ両親も自由にしてあげたいって思ったの。だからもういいよって。好きにしていいよって言ったの。そしたら・・・お母さんが・・・ゴメンねって・・・。」
堪えていた涙が一気に溢れた。
「ケンちゃん・・・あたし、間違ってないよね?お父さんとお母さん、幸せになれるんだよね?だからあたしも・・・幸せになれるよね?」
今にも壊れそうな京香。
決して他人には見せない弱い自分を健太には見せていた。
「よしよし、京ちゃん。泣くなよ?」
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