350人が本棚に入れています
本棚に追加
やはり何か言いたげな様子の少年を見て、タツキは少し考える素振りを見せてからフローラを向いた。
「フローラちゃん、わりい、先行ってて」
「あ……うん」
フローラ自身も当然気にはなっていたのだが、隊長にそう言われては致し方ないので、時折ウィルを心配そうに振り返りながらも部屋の中へ駆け込んだ。
タツキはそれを見送ってから、改めてウィルを眺める。彼の目線に合わせて腰を落とし、少々乱暴ではあったが続きを促した。
「なんだよ」
「……あのね。ぼく、ずっと好きじゃなかった。隊長さんの事」
ウィルは振り返ったが、顔だけは逸らしたままだった。一度不安げな表情でタツキに視線をやった彼だったが、本人が『いいから続けろ』とでも言いたげな顔をしていたので思い切ったように息を吸う。
「怖かったんだよ、ほんとは。フィルはすぐなじんだみたいだったけど、ぼくはずっと怖かった。だって隊長さん、軽そうだし不良みたいだし。でも、ぼくはお兄さんだから。フィルの前でわがままなんか言えないし、カッコ悪いとこ見せられなくて、我慢してた」
「はーん。それで弟と一緒に寄って来なかったワケか」
「……ごめんなさい」
最初のコメントを投稿しよう!