捧げる祈りに癒しの光を

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 未だ木の影に隠れ、ハラハラしながら事の成り行きを見守るバートをよそに、シェリーはゆっくりと人だかりに近付いていった。 「あの……」 「だからお前らは駄目なんだ。みんなで平等に、なんてヌルい事抜かすから」 「あ……」 「当たり前じゃない! あなた達みたいな極端な思想の人がいるから私たちが迷惑してるんでしょ!? だいたい――」 「あのっ!」  二つの派閥のリーダー格であろう男女達のいさかいを、叫びに近い声で静止するシェリー。当然、その場にいた人々の注目は彼女に集まる。特に男性は、筋骨隆々とした二の腕を組みながら苛立たしげに罵声を浴びせてくる。 「なんだ小娘が! 取り込み中だ、後にしろ!」 「だめです、私も取り込みたいのです」 「あんだと!? この――」  男はシェリーの細い体を突き飛ばそうと腕を振り上げたが、その際に視線が別のものを捉えたらしく、実際に彼女が害を被る事はなかった。思わず振り返ったシェリーは、奥から走ってくるバートの姿を確認する。彼もさすがに隠れている場合ではないと悟ったらしい。  バートはかろうじて追い付くと、自分に突き刺さる数々の鋭い一睨みに苦笑を漏らす。
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