捧げる祈りに癒しの光を

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「――まあ、ねぇ。こんなガキ共に二回も続けて落ち着けって言われたら、腹は立つけどしょうがないわね」  二回も続けて。シェリーはすぐそれに気付いて頬を赤らめたが、横のバートが小声で大丈夫だとなだめた。一般人であるシェリーがあそこまで言えるのは既にすごい事なのだ、と。  各派閥に所属している人数は、女側が男側の約二倍ほどと取れる。心なしか、男側の方は気の強そうな顔ぶれが揃っており、女側はおとなしめのメンバーが並んでいるように見えた。雰囲気を見る限り、まともに話が通じそうなのは女側だったので、シェリーとバートは揃ってそちらを向く。女は髪をかきあげながら早口に告げた。 「今、この村治癒術が使えないでしょう。理由は村長様が調査してくださってるそうだから、私たちは栄養を作る田畑をみんなで分け合って、治癒術復活まで耐えましょうねって話をしてたのよ」  しかし、その話を途中まで聞いていた男が地面に唾を吐き捨てる。 「綺麗事抜かしやがって。そう言い続けてもう一ヶ月は経つじゃねえか。しかも田畑は平等に分け合ってるはずなのに、耕すのは俺ら任せだ。ちったぁ手伝えよ」 「何よ、こっちは子どもがいるのよ」
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