捧げる祈りに癒しの光を

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 優等生を連想させる発言に、男は明らかに気分を害したようだった。彼は上から舐め回すようにシェリーの顔を眺める。 「嬢ちゃんよぉ、世の中ってもんはそんなキレイ事じゃ回んねえんだよ。わかったら出しゃばんなや。部外者が」 「命の問題に部外者も何もありません」  シェリーが臆病であったなら、この男もこうまで苛立つ事はなかったかも知れない。しかし彼女は自分より体格のいい大男を目前にしても毅然とした態度を保てる高潔な魂の持ち主であった。その凛とした姿勢に慌てふためいたのはむしろバート。彼とてシェリーがこうまではっきりと自分の意見を述べるタイプとは思っていなかったらしい。  バートは険悪なムードになってしまったシェリーと男の間に割って入る。 「ま……まあまあ落ち着いて、ね。二人とも言いたい事はいろいろあるでしょうけど、ほら、価値観の差とかあるじゃないですか」  男だけでなく、女からももの言いたげな視線を送られていたバートだったが、敢えてそれを無視して早口で続ける。 「それに、俺達部外者でもないんですよ。実は村長夫人から依頼を受けたギルドの者でして。今、治癒術問題を解決しようと活動中なんです」
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