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ギルド、と聞くと、女の表情が変わった。先刻までのような荒んだものではなく、どこか希望を宿したような瞳。男はさして変化はなかったが、強いて言うならば怪訝そうな顔でバートとシェリーを交互に見やる。
「ホントかよ。怪しいな。モグリじゃねえのか」
「いやぁ、さすがにそんな嘘は付けませんよ」
バートは終始軽やかに男の嫌みをかわす。こういった場面を平和に乗り切る技にかけては、一番隊の中でも彼の右に出る者はいない。他の者ではどうしても途中で怒りを露わにしてしまうのだ。彼の穏やかな語り口に影響されてか、男の口調からも次第に棘が抜けていった。
「……そうかよ。そんじゃいっちょ、ギルドの底力を見せてくれよ。そしたら信じてやらん事もないぜ。なぁ」
男の言葉の語尾は女に向けられていた。彼女は一瞬男を睨みつけたが、直後に咳払いしてから視線を外す。そして腕組みをしながら返事をした。
「そうね、構わないわ。――この問題、早くどうにかしてよね」
バートは一礼しながら、承りました、と一言返す。さすがに資産家の出身、着ているものこそラフだったが、非常に上品な雰囲気を醸し出していた。
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