捧げる祈りに癒しの光を

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「そうですか、それは良かった」  バートがにこやかに返す。ここに来てシェリーもようやく顔を上げ、女に向かって頭を下げた。すると女は先刻までとは大違いの優しい瞳を彼女に向ける。 「あんた、ありがとうね。可愛い顔してメソメソしないのが気に入ったよ」 「……いえ、私……」  シェリーは再び俯き、視線を泳がせる。それから思い切ったように顔を上げ、必死に訴えかけるように繋げた。 「私、村長さんのお孫さんと似た立場にいる人を知ってます。おじいちゃんっ子で、おじいさんはとても偉い人で。だから、つい――」  感情移入、してしまって。語尾になるにつれ、言葉が徐々に弱々しくなっていく。バートも女も、それを聞いてようやく納得の表情を見せた。だからこの少女はあそこまで逆上してしまったのか――と。  バートは視線を上に向け、んー、と唸る。何やら適切な言葉を探しているようだった。しばらくして視線を戻した彼は、やはり穏やかな口調で語りかける。 「あの人、さ。多分シェリーさんが正しいの解ってるよ。さっきちょっと申し訳なさそうな顔してたし。ただ、素直に頷くのはプライドが許さなかっただけなんじゃないかなぁ?」
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