捧げる祈りに癒しの光を

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「バート兄ちゃんへたれー」 「へたれー」  フィルとウィルにまでそう称されてしまい、バートは返す言葉も見つからずに起き上がる。とはいえここは穏やかな気質の彼の事、そう簡単に怒りを露わにはせず、ははは、と苦笑だけで場を済ます。 「あの、タツキさん。フローラさんは……祈りの声はもう聞こえないみたいですが」  胸の前で両手を組み、小首を傾げながらおずおずと尋ねたシェリーに、タツキは明るい表情で返した。 「おう、孫の意識を取り戻す事には成功したってよ。で、身だしなみ整えるから男は出ろって言われちまってさ、今はこいつらのお守りしなきゃなんねえんだよ」  タツキは両脇にいる双子の頭に手を置く。すると、彼の左手に頭をこねくり回されていたフィルが心外そうに頬を膨らませて彼を見上げる。 「お守りとか言うなよー。おれらは赤ん坊じゃないんだぞ」 「似たようなもんだろ。文句言うなら遊んでやんねえぞ」  相変わらずタツキとフィルとは仲が良いようだったが、その脇でウィルまで一緒になってじゃれているのにはバートもシェリーも驚いた。今までウィルは大人びた顔しか見せなかったのに、何があったのだろう、と。
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