捧げる祈りに癒しの光を

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「――つまりね。すれ違いだったの」  隊長の提案に従い、ベルの身だしなみが終わって落ち着いた後にフローラへ働きかけたところ、彼女からは開口一番このような言葉が返ってきた。すれ違い、その表現に首を傾げるシェリー、頭をかくバート――各自が示した反応は多種多様だったが、共通するのは『全員が頭に疑問符を浮かべた事』である。  ちなみに彼らがいるのは、依頼を受けた応接間ではなく、フィルとウィル、それにベルの両親の部屋。かつてフローラが気に掛けたが、ウィルが『思い出の場所だから』と拒んだあの部屋である。今は最初に見た不自然な光も消え、大勢の人間に囲まれているからか温かみさえ感じさせる空間になっている。  そしてこの場に居合わせているのは、一番隊の三人とシェリー、村長夫婦にその孫三人。村長夫婦とベルはベッドに並んで腰掛けていたが、他の者は立っていた。 「すれ違い……ですか?」  聞いた言葉をそのまま繰り返したシェリーに、頷いて返すフローラ。彼女はさらにベルを見やる。双子と同じライトブラウンの髪を耳の下で緩く二つに分けたベルは、フローラに穏やかな澄んだ瞳を向け、にこやかに微笑んだ。
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