捧げる祈りに癒しの光を

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「この度は大変お世話になりました。皆さんには心から感謝しています。――そう、私は祖父のために祈る事ばかりに必死でまったく気がつかなかったのですが、神様は最初から祖父を助けてくださるおつもりだったようです」  女性にしては低めの落ち着いた声に、足首までが隠れる茶のスカートが清楚なイメージを作り出している。外見と中身に大きなギャップはないらしい。 「フローラさんは、交渉を続ける私と神様の様子を見に来てくださいました。私の使う治癒術のイメージに意識だけを飛ばして――。フローラさんによると、私は必死になりすぎて神様の足にしがみついていたのだそうです。だから神様は祖父を治したくとも治せず、私を離そうとも離れず、身動きが取れなかったようで……」  しがみついていた自覚がなかったのはお恥ずかしい話ですが、と頬を赤らめるベル。フローラが苦笑しながら言葉を引き取った。 「うん、まあそんな状態だったから、結局わたしはベルさんと神様をゆっくり引き剥がす事しかしてないの。そしたら、ベルさんの意識を引き戻す事はもちろん、解放された神様がおじいさんを助ける事もしたから、二人同時に目が覚めた――ってわけ」
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