捧げる祈りに癒しの光を

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 治癒術を使う際作られるイメージ内の話はかなり専門的なので、他のメンバーが完璧に理解出来るものではなかったが、それでも納得は出来る説明だった。ただバートは、幻とはいえ神ともあろう者が足を拘束されたくらいで治癒を拒まれるのか、との質問を投げたが、神は治癒術士の祈りを聞き入れると儀式として舞い踊るから、とフローラが答えた事でようやく落ち着く。  他に質問はあるかと周囲を見回した彼女に、手を上げたのはタツキだった。 「はーい、フローラ先生。結界は何だったんだ?」 「あ、それは私がお答え致します」  ベルが応じたので、タツキは手近な壁に寄りかかって両手をポケットに突っ込み、彼女を見た。 「この村には優秀な治癒術士がたくさんいらっしゃいますから……祖父を助けるまで連れ戻されては困ると思ったのです。それで、たまたま村に一時滞在していたエルフの方に頼んで結界を張ったのですが……あれはどのようにして破られたのですか?」  バートとフローラが揃って苦笑を漏らす。まさか魔法で作った結界を剣技で破りましたと言われて誰が信じようか――信じようが信じまいが、それが事実なのだから告げるしかないのだが。
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