捧げる祈りに癒しの光を

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 この話はこれで終わり、と言うように早口で言うと、彼は壁から背を離す。それから外に目をやりながらバートに尋ねてきた。 「外の騒ぎは収まったのか? ……じゃなきゃ戻って来ねえよな?」 「何そのプレッシャー……収めたよ。収めましたよー。散々暴言吐かれながらね」  バートは両手の平を上に向けながら苦笑混じりに答える。すると村長夫婦とベルが申し訳なさそうに彼へ一礼してきた。特にベルの両手は双子の頭に伸び、無理やり下げさせていたので、慌てて身振り手振りで大丈夫だと伝えるバート。フローラとシェリーはその様子を微笑ましそうに眺めていた。 「ねえ、フローラさん」 「なに?」  不意にシェリーがフローラを向く。フローラは組んで前に反らしていた細い指を解き、優しい瞳で彼女を見つめ返した。 「結局みんな、すれ違ってたんですね。外のいさかいも、ベルさん達も」 「そうだね……。きっとみんな、不安だったんだね」  シェリーは微笑み、部屋を見回した。フローラもそれに習う。最初はここに入れてくれなかったウィルが隊員を入れる気になったのも、不安が解けたからだろうか。彼女にはそんな気がしてならなかった。
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