捧げる祈りに癒しの光を

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 事実を悟ったフィルの表情はパッと輝いた。フローラを見上げた瞳に、宝物でも見つけたような無邪気な煌めきがあった。彼はフローラに向かって、満面の笑みで礼を言う。もちろんその場に居合わせていた仲間達にも、何度も何度も礼を言う。  照れくさいほどに感謝された一行は、胸いっぱいの充実感と解放感と共に村長一家を後にした。 「――待ってくれ」  村の出口まで来ていた四人は、不意に野太い声で呼び止められた。振り返ったはいいが、タツキとフローラは状況が把握出来ないために揃って首を傾げる。しかしバートとシェリーは揃って目を丸くする、という反応を見せた。それに気付いたタツキが、バートに向かって『こいつは誰だ』と視線で訴える。しかしバートは無反応。むしろ気付いてもいない。  男はというと、その逞しい腕を片方頭の後ろにやりながらも、まっすぐにある人物を捉えていた。その人物とは、四人の中で唯一ギルドと無関係である少女。  シェリーも同様に男をまっすぐ捉えていた。そう、バートからしてみれば、先刻険悪な空気のまま別れてしまった二人。再会を目の当たりにした事で、彼が内心ヒヤヒヤしていただろう事は想像に難くない。
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