捧げる祈りに癒しの光を

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 しかしそんなバートの危惧をよそに、男はシェリーに向かって、ただまっすぐに頭を垂れる。 「すまなかった。あんたに八つ当たりしてしまって……。思えば村長の治癒を否定すんのは、名物の治癒術を否定すんのと同じだった」  シェリー自身は、片手を口元に置いて目を丸くしていた。男はバートにも同じように、潔く頭を垂れる。余計な言い訳を並び立てるでもなく、何度も繰り返し謝罪するでもなく、ただ一度、ただ一言。それが言いたかったばかりに一行を追ってきたらしい。  タツキとフローラはどちらともなく顔を見合わせ、二人してその場を静かに去ろうとしたが、しかし男本人に止められる。 「あんた達がギルドの人だろう。……あんた達には元々借りがあったってのに、俺まで世話になっちまった」 「借り? 何の話だよ」  タツキが両手を腰にあてながら問うと、男も彼を見る。 「――俺の息子に仕事をくれたのはあんただろう。強盗を働いたバカ息子によ」  バートが目を見張る。言われてみれば少し前、隊長がリュウと二人で捕まえ、後に『清掃係』に任命した強盗達が確かにいたのだ。強盗は二人組だったが、彼はおそらく巨漢の父であろう。
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