捧げる祈りに癒しの光を

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 ちなみに端から見ていたフローラもその話は聞いていた。彼らが来るまでは、彼女がギルド内全域の清掃を担当していたからである。現在は形式上その任より外れているが、手が空くと結局清掃を手伝う事があった。その際に時折言葉を交わす強面の男を脳裏に思い描くフローラ。今も元気でやっていますよと口を開きかけたが、それより早く隊長が軽い口調で男の言葉を受けた。 「何の事やら。人違いじゃねえの?」 (ふふ、やっぱり)  素直じゃないんだから、と笑い出したくなるのをこらえるフローラ。バートも楽しそうな表情をしている。自身の善行を大っぴらにするのはイメージにそぐわないとでも思っているのだろうか?  男もフローラやバートと似た推測をしたらしく、荒々しい顔付きに優しさが灯る。それはまさしく『父親』の顔だと目を細めるフローラ。 「どうせ便りのひとつもねえんだろ? オレが言っといてやるよ、父ちゃんが心配してっから連絡くらいしてやれってな。それまでは無事でも祈ってやんな」 「はっ、噂通り、威勢のいい兄ちゃんだ」  男は吹き出す。すみません、うちの隊長は口が達者で――言いかけたバートの頭を容赦なく殴る隊長。
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