辿り着いた、その先に

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 ここでレオンは、再びシェリーに目を移す。このまま自分が続けていいのか、視線で確認を取っているようだった。彼女が頷くのを見ると、レオンは再びシリウスに向き直り、彼をまっすぐ捉えて話を続ける。 「今の僕は、前世とは違う。僕もシェリーと同じで前世の記憶はないんだけど、それだけは解るよ。――今の僕は騎士だから、戦いを挑まれれば真っ向から相手になるし、前世と同じ理由で自殺を図ろうとも思わない。僕なら、前世と同じ立場に立たされれば生きるよ。生きて強くなって、自分のような人間を出さないようにしたいと思う」  シリウスは目を閉じ、かつての義弟の言葉に耳を澄ませていた。自分の弟であった弱気な保育士と目の前の凛々しい青年は、まったく違う人物なのだとようやく認識した――端から見ていたタツキにはそう思えた。  レオンには前世の記憶こそないが、前世の悲劇による後悔や、それを二度と繰り返さないように、という決意だけは色濃く受け継いだらしい。彼が普段から強さを追い求めているのも、おそらくそのせいなのだろう。  レオンはやや時間を置いてから、はっきりと告げた。 「今の僕はきっと、前世より少しは強くなった。だから、妹さんの事は心配しないで。今度は怪我なんかさせないし、泣かせないから」
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