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それを聞いた途端、シェリーの頬が一瞬で赤く染まった。対照的に、レオン自身は至極生真面目な顔をしてシリウスを見ている。レオンの口調から察するに、彼女の心を掴もうだとか、そういう魂胆は微塵もなさそうだが、タツキはどことなく居心地の悪さを感じた。背中を預けている扉の向こう側に逃げ出したくてたまらなくなった。
しばらく沈黙が流れた後、おずおずと口を開いたのは、まだ頬に赤みが残っているシェリーだった。
「……あ、の。もうお分かり頂けたでしょうが、今の私はとても幸せなのです。ですから、シリウスさんが――お兄様が、心配する事は何もありません。この人は、たとえ逆境に身を置いたからと言って、簡単に膝を折るような人ではないのです。私にはもったいないくらいに素敵な方なのです。ですからどうか、ご安心ください。私なら、ちゃんと幸せにしてもらっていますから」
シェリーはしどろもどろになりながらも、必死にそう訴える。シリウスはというと、シェリーを見、次いでレオンを見、最後にタツキと視線を合わせてきた。予想外に目が合って驚いたタツキに、シリウスはただひとつ、懇願をする。
「……かつて俺と関わった人物に、出来る限り会わせてくれないだろうか」
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