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次いで、タツキの背後にあった扉が僅かに動く。扉が背中を押すので、タツキが場所をどけると、僅かに開いた隙間から、フローラがひょっこりと顔を出した。
それを見たシリウスは、またリュウの顔で表情を綻ばせる。フローラは最初こそ驚いた顔をしていたが、すぐに状況を把握し、扉からゆっくりと出てきた。
「……マリア」
「シリウスさんなんですね。良かった、リュウ君には何も悪さをしてないみたいで」
「しようにも出来そうにないよ。竜の力というものは、想像を絶するらしい。今の俺にはちょうどいいかもしれないな」
フローラは微笑むと、タツキを向き、ツカサの治癒を終えた事を伝えてきた。
「今、ぐっすり眠ってるよ。しばらくいろんな事が続いたから、疲れちゃったのかもしれないね。今、中でクリアさんが見ててくれてるの」
「クリアが? さっきあの顔にさらわれたばっかだけど」
「わたしもそう思って止めたんだよ。わたしが残るから大丈夫ですよって言ったの。でもクリアさん、私なら大丈夫だから、って言って譲らなくて……」
「マジかよ。ったく、しょうがねえ奴だな……」
タツキはズボンのポケットに両手を突っ込み、舌打ちをした。
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