辿り着いた、その先に

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 無理もない――そう言ってきたのは、フローラでなくシリウスだった。意外なところからの返答に、タツキはポケットに手を入れたまま、シリウスに目をやる。 「俺はセレナを襲ってしまったんだ。俺の心から出来る限り離れた方が、安全と考えてもおかしくない」  シリウスの淡々とした口調に、タツキの心は僅かに波立った。相変わらず、自分は彼女を話題にされると平常心を失う傾向にあるらしい。  だが、今更慌てる理由はなかった。今の自分は、彼女の話をされるたびに心が波立つ理由を、自分なりに把握している。もう、得体の知れない感情だと不気味に思う事もない。『セレナ』は姉かと尋ねてくるレオンに頷いて返すと、タツキは自分の心の波立った部分を素直にぶつけた。 「……セレナはそうかもしんねえけど、クリアは違うから。お前が怖くて隠れるような奴じゃねえから。お前と一緒にすんな」 「俺が、セレナを怖がって隠れる?」 「そうだよ。真っ向から顔を合わせたくないのは、クリアじゃなくてお前なんだよ。まともに顔合わせて拒否られるのが怖いのか? ――ふざけんなよ。お前どんだけあいつを舐めてんだよ。あいつを襲った事がお前の意思とは関係なくても、あいつ随分怖い思いをしたんだからな。消える前に顔見てちゃんと謝っていけよ。それが最後のけじめってもんだろうが」
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