辿り着いた、その先に

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「……もう満足か?」  もったいないような気はしたが、一連の事件を完結させるのは、自分でなければならないと思った。だからこそ、このどことなく朗らかな空気を壊してまでも、自分から切り出した。人にけじめを要求しておいて、自分が何もしないのは、プライドが許さない。シリウスとは何の関連もない、タツキ自身のプライドが。  シリウスの方も、その意図を察したのかもしれない。腕組みをしているタツキを振り向いて、ただ無言で頷いてみせた。それから、かつての身内達と一人一人目を合わせ、最後にまたタツキを見る。 「四千年も付き合わせてすまなかった。これからは、お前の時間を、お前自身のために使ってくれ。俺はもう、お前を縛らないのだから」 「もうオレには会いに来るなよ? お前の顔も見飽きたぜ」 「四千年だからな。究極の腐れ縁だ。生まれ変わったらまた会うかもな」 「げー。オレ絶対逃げるからよろしく」  久々に軽口を叩くタツキに、シリウスは声を上げて笑った。しかし、不意に笑顔を引っ込め、シェリーを向く。彼女と向き合うときのシリウスの顔は、『兄』そのものだった。 「――元気で」 「はい、お兄様」 「コーネリアはそこまで上品じゃなかったよ。男勝りだったあいつが、きれいな女性になったものだ。――レオン、妹を頼むぞ」  レオンは何も言わず、静かに頷いた。
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