辿り着いた、その先に

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「……マリア、人の心配はいいが、自分の身体にも気を付けるんだぞ。アンナ、男に生まれ変わってまでも眉が八の字とは何事だ、もう少し自信を持て。ラクティス、喧嘩はほどほどにな。レディになったなら少しはしとやかにならないとな。セレナ、前世では身体が弱かったばかりに早く散ってしまったが、今度は長生きするんだぞ」  マリア――フローラは素直に頷いた。アンナ――バートは複雑そうな顔で頭をかいていたが、渋々といった風に頷く。ラクティス――ティナは、どういう意味よと声を荒げつつ、最終的には頷く。セレナ――クリアは一瞬小首を傾げ、コクコクと二回頷いた。  シリウスは、そこまで告げると目を閉じる。そうしてしまうと、彼がリュウの身体を抜けていくのは早かった。  シリウスが消えゆく瞬間自体は目に見えなかったものの、代わりにリュウの身体がガクンと崩れ落ちる。それを慌てて支えたのは、フローラだった。  リュウはしばらくぼんやりとした表情で目を瞬いていた。意識がはっきりしてくると、彼は傍らのフローラに礼を言いつつ、ゆっくりと立ち上がる。どうやら彼の体調に問題はないらしく、周りに飛び交う心配の声にも礼で返していた。  ふと、バートが不思議そうに呟く。 「あのさ……。リュウ君だけは、前世が誰だか解んないよね? 兄貴、知ってる?」
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