辿り着いた、その先に

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 タツキは両手をズボンのポケットに突っ込みつつ、答える。その内容は、実に単純明快。 「リュウに前世はねえんだよ」 「俺に前世がない? つまり、なんだ」 「お前が第一号って事。シリウスと同じだな。前世からの影響もしがらみもない、まっさらな状態。それがお前だ。まあ、好きに生きるんだな。お前の言動は、少なからず後世に影響するけどな」 「ふむ、俺は人知れず大役を仰せつかったようだな。これぞ神の試練と呼ぶに相応しい」  軽快に流れるような口調のタツキと、抑揚を付けない淡々とした口調のリュウ。二人のやりとりにいつもの色が戻ってきたためか、一同の緊張が解け、和やかな雰囲気に包まれる。  しかし、タツキはふと、クリアが一同に背を向けてどこかへ歩いていく姿を目にする。そのために思わず笑顔を消した彼に、初めて気付いたのはレオンだった。レオンはタツキの視線を追い掛けて事の真相を知ると、肩を軽く叩いてきた。 「姉さんが気になるなら、様子見に行ってきたら?」 「な……おいおい、誰が気になるなんて言ったよ!」 「相変わらず素直じゃないな。顔がそう言ってるんだよ。嘘だと思うなら、鏡でも見てみたらどう?」
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