辿り着いた、その先に

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“どんな顔してても、好きなの。あなたとのデートの事、楽しそうに話す顔だって好きだった。ほんとよ? だってそういうときのたっくんは、とても純粋な顔をしているの。それって、彼が誰かを一途に愛せる人だって事でしょう?” “だから、私。私の大好きな人を、笑顔にしてくれたマナさんの事も、大好きなの。それから、今でもお墓参りするくらいあなたを愛しているたっくんも、大好きなの。――あなたの存在までひっくるめて、たっくんが好きなの” “……たっくんの一番になれなくたっていいのよ。そんなのただの我が儘だもの。ただね、本当に、あの人には早く幸せになって欲しい。私の事は、『幼なじみ』としていくらでも使ってくれて構わないから”  雪の中で聞こえてきた言葉が、自分の中で延々と繰り返される。ひとつひとつ思い出すたび、自然と歩調が速くなっていく。すぐにでも、今すぐにでも、彼女に会わなければならないような気がした。  そして、彼女に撤回させるのだ。『私の事は、幼なじみとしていくらでも使って構わない』――彼女が震える声で言ったあの言葉を、出来る限り早く捨てさせるのだ。 (……自分ばっか犠牲になりゃ、丸く収まると思ってんじゃねえぞ)  『幼なじみ』と『恋愛対象』――おそらく今のクリアは、自分にとっての彼が持つ二つの側面の間で、十年以上迷っている状態だ。彼女を救い出すには、タツキが自分の気持ちをはっきり伝えるしかない。そしておそらく、このチャンスを逃してしまえば、もう後はない。
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