辿り着いた、その先に

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「そういうの、柄じゃねえから」 「もったいなーい。せっかくそんなにかっこいいのに」 「ヒーローってのは、お前の弟一人でじゅうぶんなんだよ、解るか? オレはああいうの無理。疲れる」  バルコニーの手すりに、脱力したように両腕を乗せるタツキに、クリアは童女のように無邪気に笑う。だが、ひとしきり笑うと、真面目な顔をしてこのような事を言い始める。 「でもねえ、たっくん。ああいう事、誰にでもサラッと言ったらいけないのよ」 「あん? 何の話だよ」  クリアは頬を染めて目を逸らす。胸元に手をあてて、気持ちを落ち着けているようだった。しばらくして顔を上げた彼女は、視線を泳がせながら、小さな声で続ける。 「たっくんは忘れてそうだけど、一応、私の方が年上なのよ。だから、たまにはお姉さんらしくしてあげる。あのね……その、黙って守られてろ、とか。そういうことは、誰にでも言っちゃだめよ。たっくん、いつも自信満々みたいな顔してるけど、本当はきっと知らないでしょう。あなた、本当にものすごくかっこいい人なのよ。あなたにそんなことを言われたら、普通の女の子はすぐ舞い上がっちゃうわ。だからこそ、そういう言葉は、本当に大好きな人にだけ、言ってあげなくちゃ。私なんかに言ったらだめよ?」
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