辿り着いた、その先に

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 クリアはしばらく押し黙っていた。口元を両手で隠して俯き、未だ頬を真っ赤に染めている。彼女はその状態で、瞳まで潤ませながら視線だけを上げた。彼女自身は無意識だろうが、俗に言う『上目遣い』というものである。 「あなたって、本当にやんちゃな人ね。私、今、初めてだったのに、あんないきなり……」  彼女の言葉の終わり際は、呂律が怪しかった。貸してやった上着の下で、肩が小さく震えている。 「ねえ、どうして、私なの? 私、マナさんみたいな素敵な女性じゃないわ……」 「オレだって、お前にマナの墓の前で褒めちぎられるような男じゃねえんだけどな」  タツキはズボンのポケットに両手を突っ込みつつ、気だるい声で返す。対照的に、クリアは肩に掛けていた上着を地面に落とすほど大慌てした。すぐに屈んで上着を拾った彼女だったが、よほど焦っていたのかまた取り落としてしまう。ようやく拾い上げて上着の埃を払いつつ、彼女は早口で尋ねてきた。 「やだ、何、聞いてたの!?」 「今のはあのときの、仕返しみたいなもんだな。散々美化された自分の武勇伝を、延々と聞かされるオレの身にもなれってんだ」 「あ、え、嘘、私なんて言ったかしら!? だめ、全然思い出せな……あーっ、やだ! 恥ずかしい……」
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