辿り着いた、その先に

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「オレ、一字一句違わずに覚えてるよ。言ってやろうか?」 「ええっ、嘘でしょう!? やだ、やめて、恥ずかしい!!」  再び上着にくるまり、声を大にして本気で恥ずかしがる彼女を、タツキはつい、からかってみたくなった。本当はそこまで完璧には覚えていないのだが、クリアは自分を疑う事を知らない。だからなのか、タツキがどうすっかなあ、と焦らすと、彼女の頬はますます赤みを帯びていく。  挙げ句の果てに、クリアはタツキの胸元に飛び付いて、口を押さえようとまでしてきた。完全に我を失うほど混乱しているらしい。  そのとき、彼女の肩からまた上着がずり落ちそうになったため、タツキは反射的に右手を出し、上着が肩から逃げるのを防ぐ。気を付けろと一言言おうとして、ふと気付いた。  タツキは、自分の胸元にいたクリアの背中に、上着を押し付けるようにして落下を防いでいた。その結果、上着の中にいた彼女までもを、自分の胸に抱き締める事になったのだ。期せずして彼の右腕に閉じ込められたクリアは、もはや身動きが取れなくなっていた。タツキ自身にとっても予想外の展開だ。  タツキは少し悩んだ末に、空いていた左手で上着をそっと肩にかけ直してやる。そのとき、彼女の背に回っていた右腕は離さなかった。なんとなく、離したくはなかったのだ。
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