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「俺、戦闘任務はほとんどやんないもん。半分飾りだよ。実際、ティナの方が俺より強いじゃん」
「ふふっ、まーね。あたしったら、入隊する前にあんたをボコボコにしちゃった事あるもんね」
「あーあ。ほんとに情けないよ、俺」
バートは本当に肩を落としていた。ティナはそれまでの笑顔を引っ込めると、両手を腰にあてて彼の顔を覗き込む。バートの気の弱いのは今に始まった事ではないと軽く見ていたが、どうやら彼は本気で落ち込んでいるようだった。
「ちょっと、ホントにどうしたのよ」
バートはちらりとティナを一瞥すると、返事をせずに歩き始めた。ティナもすぐさまそれに続く。
彼女が追い付いてくると、バートはひどく頼りない声を出した。
「今日、雪国で祭典があるだろ」
「あるわね」
「だから俺、妹とさ、一緒に祭典に行く約束をしたんだ」
「へえ、いいじゃない。で?」
「だけど今日は、久しぶりに兄貴が現場復帰する日でもあるだろ。やっぱ祭典どころじゃないよね。一番隊にとって、兄貴は神様みたいなもんだし、せっかくの現場復帰の日に私情で休む訳にもいかないよ。でも、兄貴の現場復帰が決まったのも今日だからさ……いきなりドタキャンするだなんて、メルになんて説明したらいいか」
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