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「なによ、そんな事ー!?」
ティナは目を丸くして、大袈裟なくらいに驚いてみせる。実際に彼女は、大袈裟なくらいに驚いていた。
「あんたってホント、筋金入りのヘタレよね! もっと真剣かつ重大な悩みだと思ったのに」
「じゅうぶん真剣だよ。かわいい妹の信頼を失う訳にはいかないんだからさ。ねえティナ、なんかうまい言い方ないかな? 同じ女性として、こう言われたら納得出来る、とかさ」
「そもそもそんな事で悩む必要がないわね。バート、ちょっと冷静に考えてみなさい」
ティナは、さながら熱弁をふるう教師のように人差し指を振りながら、もったいぶって言う。そうして不意にその指を、ビシッとバートの鼻先に突き付けた。隣を歩いていたバートが足を止め、びくりと肩を震わせると、彼女は単刀直入に言い切る。
「あのタツキが、『祭典』の日に、大真面目な顔で仕事なんか取ってくると思う?」
「言えてる……!」
「おいコラ。どの口が舐めた事ほざいてやがる」
思わず目を輝かせて納得したバートは、次の瞬間、後ろから首根っこを掴まれた。襟が首元に食い込み、バートはぐえ、と呻き声を上げる。彼をそのような目に遭わせているのは、無論タツキ本人であった。
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