始まり

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「んじゃ耕弥、また来週な」 「おう」 軽く手を上げる友人にこちらも手を上げて返す。 高校に入学して約2ヶ月、クラスにも大分慣れ、それなりに仲のよい新しい友人もできた。 帰りのホームルームを終え、慣れてきたと言うよりすでに飽きてきた教室を後にする。 家から徒歩20分、近いからと選んだ普通科高校の校門を出る。 自転車で通ってもいいのだが、俺は歩きながらどうでもいいことをつらつらと考えるのが好きなのでいつも徒歩で登下校している。 最近よく考えるのは"生きる"ことについて。 別にかっこつけてるとかそんなんじゃなく、こういう哲学的なことはいくら考えても正しい答えなんてものが出ない。 なんかそういうジレンマというか、もどかしさが好きなのだ。 単に思春期特有の青臭い悩みに理由をつけてるだけかもしれないが。 閑話休題、俺は"生きる"のがつまらない。 友人との馬鹿な掛け合いや漫画や小説を読んだりするのはそれなりに楽しい。 でも、"生きる"のはつまらない。興味がないとも言えるかもしれない。 なんとなく理由は分かっている。 俺は"生きる"のがつまらないのではない。 "自分"がつまらないのだ。 俺は"生きる"のに興味がないのではない。 "自分"に興味がないのだ。 友人との馬鹿な掛け合いが楽しいのも、 漫画や小説を読むのが楽しいのも、 俺じゃない他のものが楽しい。 俺の人生は暇潰し。 "自分"というつまらない空白をどれだけ"楽しいこと"で塗り潰せるか。 横断歩道にさしかかる直前に信号が赤になってしまったので一端歩みを止める。
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