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天井の中央にある、照明にしては暗めの光が照らしているこの一室。
本棚がたくさんあり、そこには一般的ではない雰囲気を持った書物が並んでいた。
そして、人が何十人と入れる広さを持っているこの一室で、2つの影が、何やら会話をしている。
1つは、紺色の仮面を着け、椅子に座って横向きの長机に向かって、肘を乗せ手を組み、組んだ手の上に顎を乗せ、少し俯(うつむ)いている男。もう1つは、橙の仮面を着け、その長机の前から数十センチ離れた場所に立っている女。
2人はそれぞれ、仮面の色に合った外套を纏っている。
「突然だが――“あちらの世界に”、“あの力”を持った救世主がいる」
男が、口を開いた。当然だが、その表情は仮面に隠されており、窺うことはできない。
「それは本当ですか!」
女は、感嘆の声を上げた。
男が言ったこと――救世主が見つかったことが、朗報だったのだろう。だが、“あちらの世界に”と限定していることから、彼らのいる世界にはその救世主が存在しない、ということになるわけだが。
「ああ。……皮肉にも、偶然なのかは分からないが」
男が、言葉を区切る。
「――かつて、この世界を救った者と同等、もしくは、それ以上の“器”を持つ者であることが分かった。宿命、いや――宿命よりも前に、決まっていたのかもしれんな」
「それはもしや、最上位の――」
「そうだ。強大な力を持つ召喚魔器(サモンアームズ)……“召喚銃”――」
強大な力――。
字の如く、強力な力を有するのだろう。女は、驚きを隠せずにいた。
「強大なエーテルを宿すものだ。それを、ある少年が有していることが分かった」
「それでは……、今すぐにでも?」
「そうだな。私が自ら、あちらへ赴く。もしかすると、“狙って”来るかもしれん」
“狙ってくる”。
彼ら敵対している者が存在していると思われる言い方で、男は言った。
「ならば尚更、急がなければなりませんね」
「ああ。早く見つけ、覚醒させる」
そう言うと、男は俯き加減だった顔を上げ、前方へと視線を移した。
(……持つべき力を覚醒させよ。さもなくば、世界は一つとなり、滅びを迎えるだろう――)
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