フェイスペイント

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 私は赤色のチェアーに座り、呆れるほど冷たいヴァニラの香りを振りまきながら、舞台役者としての化粧を施されていた。 今は女性ならば大抵の人が化粧をしている。私の先程まで熟れたように真っ赤な皮膚も、化粧をすれば白く透明に爛々と輝きだした。 対になった私。これを一種の美徳として扱い出したのは誰だ。鏡を見ると毎回思う。 私はもう林檎とかそういう域でなく、嚇怒したかのような内臓色の頬をしていて、我ながら滑稽な作りである。 私の素っぴんを見る人はみな震えた声で同じ疑問を発す。 「どうしたの?病気?」 生まれつきなんだよ、と説明するのも面倒だった。 幼少の頃は、この肌のせいでちっとも友達ができなかったし、好きになった男の子にも相手にしてもらえなかった。
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