第三話 火中の栗を拾う

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 4  イズミは、アリアから受け取った箱の前で唸っていた。  ジャムはというと、夕食を終えた余韻にひたってうとうとしていた。 「なあ、ジャム。」  ジャムは目を覚まして顔を上げた。 「さっき、なんでぼくのことを、“イッくん”って呼んだんだ?」 「あ…。ごめんなさい…。」  ジャムは聞き咎められたのだと思い、目を潤ませた。 「違う違う、その呼び方が嫌だとか、そういうんじゃないんだ。ただ…ちょっと懐かしいなって思っただけだから。」  前にたったひとりだけ、イズミのことをそう呼んでくれた人が…。 「イッくん、はい。」  ジャムは手を差し出した。その手には鍵が握られていた。 「…ぼくにしかできないこと…か。」 “私は、どんな時でも絶対にあきらめない、そんなイッくんが…。” (ここで逃げたら、またあいつに叱られるな…。)  イズミは鍵を箱の穴に差し込んだ。  ところが、差し込んだきりひねりもせずに動きを止めた。手を離して、頭を抱えた。 「…イッくん?」 「大丈夫。ちょっと疲れてるみたいだ。…もう寝る。」  そう言って灯を消して、ベッドの上に寝転んだ。ジャムも元々半分寝ていたので、床に新しく敷いてもらった布団に潜って十秒後、もう寝息を立てていた。  イズミは布団の中で膝を抱えて丸くなった。 (この感じ…あの時と同じ…。)  熱くて、苦しくて、だけど誰も気付いてくれなくて…。 (助けて…イヅミ…。)
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