第三話 火中の栗を拾う

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「イッくん!」  矢が髪を切り割く寸前、そう叫ぶ声が聞こえた。そして、ランが何かの衝撃を受けて弾かれ、そのままイズミから遠退くように飛んで、向こうの大木に激突した。  何が起きたのか、瞬時には理解できなかった。 「イッくん、大丈夫!?」  赤髪の少年がイズミの元へ駆け寄って来て、鎖を解いた。支えを失ったイズミはその場に力無く座り込んだ。  状況を把握しようと、ランの飛んで行った方向を見た。木に寄り掛かったランに、矛先を向けている者がいた。 「もうすぐ隊長たちも来ますよ。大人しく降参し、ビュウに攻め入った訳を話してもらいます。」 「ビュウに攻め入っただって?先に仕掛けて来たのはどっちだと思っているのよ!!」  思わぬ反論を受けて、オルフは一歩後退した。その隙にランは何かを地面に叩きつけた。そこから白煙が吹き出して、辺りを包み込んだ。これでは何も見えない。  風が煙を掻き消した頃、ランの姿も消えていた。オルフは深追いもせずに少年二人の元へ近寄った。 「ジャム、ずいぶんと早かったな。」  ジャムが走っていってから、ものの一分しか経っていない。村まで往復したにしてはあまりにも早すぎる。 「うん。途中でこの人に会ったの。」  ジャムはそう言いながらオルフを指差した。人を指差すのはよくないだろうが、ジャムはオルフのことをまだよく知らないのだから仕方がない。 「あれ…?でもさっき、隊長たちも来るって言ってなかったっけ。」 「あれは嘘ですよ。ああでも言わないと、戦闘になってしまいますからね。」  嘘も方便ということだ。
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