第三話 火中の栗を拾う

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「…さて、帰りましょうか。」  オルフは何の気なしにイズミを背負って歩き出した。後から鎖を持ったジャムが付いて来る。 「な…。降ろせ!自分で歩く!!」  ぽかぽかと頭を叩かれても、降ろす気配は更々ない。 「イズミはあまり無理をしない方がいいですから。」  その言葉で急に大人しくなった。叩く手を止めて、オルフの背に身を預けた。 (ぼく、また、何の役にも立たなかった…。)  あんなに頑張っているのに、大事な所でいつもいつも失敗して、みんなに迷惑ばかりかけて…。足手まといにしかなっていないじゃないか。 「…イズミは、戦闘には向いていないのかもしれませんね。」 「え?」  唐突に言われて、思わず声を出した。 「決定的な弱点がありますから。」 「弱点…?」 「優しいことです。」  イズミはふっと顔を上げた。まさか、オルフにそんなことを言われるなんて思っていなかったからだ。 「優しいから、無意識のうちに相手を傷つけることをためらい、恐れてしまうんです。実戦では、その優しさは命取りになってしまいます。」 「そ…それじゃあ…。ぼくはどうすれば…。」 「イズミには、イズミにしかできないことがありますよ。」
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