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げ。
そこにいたのは“パソコン人間”の異名を持つ同じクラスの速坂 紅基(はやさか こうき)だった。
コイツは感情ないんじゃないかと思う程、無表情で何を考えてるかさっぱり分からない。
顔はそこそこ良いのだが、眼鏡の下の感情のこもっていない切れ長の目が、周囲の人間を寄せ付けない。
見事に高校という社会を一人で生きていた。
その上、質問をすると必ず理論に基づいたような答えが返ってくるから“パソコン人間”との異名を付けられている。
で?
そんな速坂があたしに何の用…?
「紅山さん? 大丈夫?」
文章にすると優しいように感じるが、実際は嫌味なトーンで言われてる。
頭大丈夫? 的なカンジで。
『速坂…何の用?』
あたしは思いっきり眉間にシワを寄せて睨んでやった。
校庭ではサッカーでもしているのか、微かにボールの音が聞こえる。
静かな校舎にあたしの不機嫌な声がよく響いた。
ぶっちゃけあたしはコイツが嫌い。
何考えてるか分からないし。
しかし、速坂は気にした様子もなく片手を顎に当てて何やら思案中。
そしてパッと顔を上げたが、やっぱりその顔は無表情だった。
「取りあえず屋上に行こう」
は?
固まるあたしを無視して速坂は「それがいい」と、一人、無表情で頷いていた。
何を言っちゃってんだコイツ。
あたしが自主的に速坂に着いていく確率など、ジャンケンに10回連勝するくらいのモンだ。
それぐらいあたしは速坂が嫌い。
悔しかったらジャンケンで10回連勝してみろ!
でもそれはあくまでも“自主的”だったらの話。
あたしはしっかりと速坂に引きずられていた。
何が起こるの…?
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