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『で? 何?』
結局、屋上まで連れていかれたあたしは、不機嫌全開で速坂に尋ねた。
用があるなら早く済ませろ!
あたしの念が通じたのか、速坂は眼鏡越しにあたしをじーっと見つめて、口を開いた。
「紅山さんは恋愛…って何か分かる?」
『は?』
速坂から“恋愛”という言葉が飛び出したことに驚いた。
速坂はあたしを見つめたまま更に続けた。
「僕は今まで周りの誰よりも勉強した。誰よりも本を読んだし、誰よりも知識があると自負してる。でも、僕にも分からないことがある。本を読んでも分からない。それが恋…または愛というものだった。どうしてあんな感情が沸くのか分からない。理解出来ない。」
速坂は一度も噛むことなく言い切った。
よく息切れしないなぁ…
あたしは心の中で若干尊敬の念を抱きながら、冷たく言った。
『で?』
悪いが、そんなに長いこと喋られても何が言いたいのかさっぱり分からない。
もっと簡潔に話してほしい。
むしろ早く用を聞いて帰りたい。
速坂は一瞬、夕焼け色の空を見上げてあたしに視線を戻した。
気合いを入れたように見えたのは気のせいだろうか。
「つまり…」
ここで速坂は小さく息をのんだ。
「僕と恋愛してほしい」
もうやだよコイツ。
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