似てないでも似てる

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それからの俺の行動は早かった。 たぶん今、昼の学校内でこのスピードで走ったら 確実に、そこら辺にいる暇な教師に怒鳴られるだろう。 でも、今は夜だ。 その心配は無いだろう。 ま、見回りの教室に会わない限りだが…… そんな事より俺は、 いち早くあの屋上へ行かなければならない。 あそこに行って本当に止められるか分からない。 着いた時点でもう飛び降りているかもしれない。 それ以前に、止める方法や なぜおれはこんなにあんな人間かですら分からない、 そんな俺に全く関わりない奴を 止めようと 助けようと 死なないでくれと 思っているのだろうか……… それすら分からないのに、 なぜこの足は迷い立ち止まるどころか どんどんスピードを上げ あの場所へ向かっているのか…… 分からない…… でもうっすら、いや、こうしておこう。 俺はだだ、死のうとする人をどうしても助けたかった。 死の辛さは、自分が潰れるほど知っているから…… そうだ、俺は助けたい、どうしてもだ。 もうこの際人間じゃなくても どうだっていい。 ただ死んで欲しくない…… それだけだ。 だから、 俺は走りながら、 進むだびにずれ落ちそうに なるメガネを押し上げながら 俺の手の中には、 もうすでに、弁当箱の存在が無い事に気付きながら ただ…… ただ……… 間に合えと…… そして、やっと屋上のドアの前にたどり着いた。  
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