似てないでも似てる

10/32
前へ
/62ページ
次へ
ドアを引こうと手を伸ばす。 その手は、かすかながら震えているのを この目で、この体で感じていた。 今になって、怖くなったのもある。 そりゃ人間なんだから、 大口叩いて怖くなる時だってある。 でも、今俺はそれを押し切り この重たい『ドア』を開けなければならない。 ……おし、開けよう、開けちまえ。 進まなければ、変えられるものも 変えることができないのだから。 そう覚悟を決め、 少し、呼吸を落ち着かせながら 生つばを飲み込んだ。 ギィィと鈍い音が鳴り、 ドアの先から新鮮な空気と 月の柔らかな光が入ってくる。 俺は、ドアの外へ出た。  
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加